月はもう一月。
僕の家族は父の仕事の関係で隣町に引っ越した。
引っ越しは初めてじゃないがあんまり引っ越しばかりじゃろくに友達も作れない。
まぁそんなに困った事ではないが。
気分転換に外に散歩に行こう。近所にも慣れておかなければならないからな。
と、そう思い、外出に出たはいいが、道に迷うことを計算に入れていなかった。
結果、迷ってしまった。
角を右へ,左へ。もう道が分からない。
ランダムに道を歩いて角を曲がった先,森みたいな公園があった。
木が多いが葉は無くて雪が被さっている。だが一つだけ,たった一つの種類の木だけ,初々しく緑の葉があり,真っ赤な花達が咲いている。
椿の木だ。
そして公園の入口近くの椿の木の下,一人,女の子が花を眺めていた。
その子は真っ赤な長い髪をポニーテールにして髪止めは真っ赤な椿の花飾り。服は赤いチューブドレス。足は,,,裸足。
雪兎みたいだ。。。
と思った瞬間,彼女と目があった。
マズイ。見てるのを見られた。
彼女は笑い僕に「こっちに来て」と言うように手を振ってきた。
まぁ,道を教えてもらおう。僕は彼女のいる方へと歩いていった。
「こんにちは。もしかしてだけど,迷子とか?」
ドンピシャ。
僕は一瞬固まった。
「もしかしてだけど,あってる?」
彼女は笑った。
「最近引っ越して来たばかりだから,,,」
言い訳っぽい,言い訳。まぁ,言い訳なのだけれど。
「あぁ,やっぱりね。」
クスクスと笑いながら彼女は一つの椿の木の下にあるベンチに座った。
顔がひきつるのを必死で防ぐ僕に彼女は笑みを向け,「隣に座って」とでも言うように,彼女の隣をぺちぺち叩いた。
は?トナリ?
クラス,バスの中,電車の中以外で女子と隣に座ったことが無い僕は彼女いない歴十七年だ。
「はやくっ,はやくっ」
「君は?君も迷ったとか?靴は?家は近くなの?」
質問で気を間嫌わせながら彼女の隣に僕は座った。
「質問攻めぇ。でも いいですけど。」
彼女は頬をぷくぅっと膨らませ笑いながら背伸びをした。
「私は迷子ではありません。家は,,,近いと言えば,近いですね。」
「じゃあ,,,」
「ストップ!ストップ!」
両腕を伸ばし僕の前で両手を振った。
「次は私が質問する番!!じゃなきゃ不公平!!」
公平主義か。まぁ良いけど。
「これは失礼。どうぞ。」
「じゃあまず始めに,貴方のお名前は?」
これはまたやってしまっていたか。雪兎同様名乗りもせずに質問攻めしていた。
「えっと,樹。樹海のじゅで『じゅん』って読む。君は?」
「私はこれ。」
???
彼女は頭にある椿の花を指さした。
「椿といいます。」
あ,,,あー。そうだよね。『これ』なんて名前,日本ではあんまりつけないね。
「綺麗な名前だね。」
「貴方もよ。樹。魅力的だわ。」
椿は笑った。
こんなに名前を誉められたのは人生で初めてだ。もちろん家族は「いい名前じゃないか」と誉め(?)てくれるが,,,家族じゃあなんともいい気分になれない。
いつもは変だとか,『樹』は『じゅん』って読まないだとか,色々言われてきたが,魅力的なんて言われたのは初めてだ,,,から,なんか,,,
「そんなに嬉しいの?」
え?
「顔。少し赤いよぅ?」
僕はすぐに右手で顔の半分を隠した。
うわぁ。恥ずかしい。
「恥じる事は何もないわ。誉められ,嬉しくなり,赤くなるのは自然だと思うわ。」
,,,,
「ははっ!!」
思わず笑いを吹いてしまった。
「君は,君の意見や考えをちゃんと言う人なんだね。」
「そうよ。だって,そうじゃなきゃ自分の声は誰にも届かないじゃない。」
確かに。
「君の言うとうりだね。」
「貴方と話してるみたいにハキハキと姉妹達に意見が言えたらな,,,と思うわ。」
椿はうつむいて呟いた。
姉妹?
「姉妹がいるのか?」
家には妹一人,姉一人だ。
「えぇ。ものすごく遠くに住んでいて,会うことが許されていないの。出来るのは時々声を聞くだけ。」
声を聞くだけ?電話か?
それは,,,,
「変でしょう?でも庭が決めた事ですもの,声が聞けるだけでも幸せだわ。」
椿はニコっと笑い僕の前に立った。
「樹って不思議ね。何故だか分からないけど。」
どういう意味だ。
「変な方でじゃないわ,良い意味の不思議。そうね。貴方になら言っても良いかしら。」
「何を?」
「私の夢」
夢?夜寝て見るやつ?
「姉妹全員に会うこと。」
「それが君の夢?」
「そう。でも無理な事だとは分かってるの。」
椿はまたうつむいた。
「違法を犯したら木は二度と咲かなくなるから。」
木が咲かなくなる,,,?
「だからお願い,もし貴方が私の姉妹全員に会えたとしたなら,彼女達の事を私に話してほしいの。」
椿は顔をあげ僕の目をみつめた。
「おいぉぃ,無理言うなよ。今さっき遠くに住んでるって言ってたじゃないか。」
「それが不思議で樹になら姉妹全員に会えると思うの。」
そのニコニコ笑いを止めないか!!
まぁ引っ越し数なら誰にも負けないから,『遠くに引っ越して偶然,椿の姉妹にあう』パターンはゼロじゃあ無くは無い。
「もし会えたらね。」
椿の顔が明るくなった。
「もしだからね。もし!!」
『もし』の言葉をかなり,,,かなり強調させた。
「じゃあ約束ね!」
小指をつき出してお約束の『指切り元万』だ。
顔いっぱいに嬉しさが出ていてこっちまで笑顔になってくる。
「あぁ,約束。」
。。。
指をきった後,椿は道を教えてくれた。
「何で僕の家知ってんの?」
「椿ですもの。」
は?
「明日も来てくれる?」
「気分が向いたらね。」
そして僕は無事帰宅した。
。。。。。。。。。。。。
どぅも,日陰カナトです。
更新が,,,1,,2年ぶりです。
えっと,,理由がデスネ端末にありまして。
1。端末が壊れまくってばかり。アンドロイドなんですけど,メモリーがすぐいっぱいになって,端末オールリセットしなきゃで。リセットした時に全てのデータが無くなってその時に話のドラフトが全て飛びました。
2。端末のアプリを僕は使ってるんですけど,ドラフト書いて,シンクさせる時に押す選択肢を間違えてばかりでデータが飛びまくり。
3。正直「もうやめよっかな」と思ってました。
でも初めてコメントが来て「もっかい頑張ろ」と思い,更新しました。次の更新がいつになるか分かりませんが見守ってくれるとありがたいです。
ここまで読んでくれて本当にありがとうございます。
コメントやPMは気楽にどうぞ。
日陰カナト。
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千の花を咲かせましょう。
Fantasy少し早いクリスマス会から家へ帰る途中、僕は小さな公園で一人の女の子に声をかけた。そしてその女の子が、僕のコレカラを変えるとは、思いにも思わなかった。