しとしと降る雨。人の歩く音。車が通りすぎる。全部、聞こえる。
窓をあけて、部屋の空気を逃がす。
俺は毎日、一人ぼっちだ。特にすることもない。
さみしい。
口に出したことはないその言葉。
自分の穴をうめたくて、たくさん本を読んだ。日本語の本も英語の本も。さみしい。たださみしい。
うめてくれたのは彼女だった。********************
叔父の転勤で、移り住んだイギリス。日本でのことは何ひとつ覚えていない。それもそうだ。移り住んだのは俺が生まれてすぐだったから。
両親は地球のどこかでなにかしてる。俺は知らない。叔父と叔母はいろいろしてくれるけどきっとそんなの社交辞令で俺に興味なんてさらさらない。
ここでは一人暮らししてる。何も不自由はないけど、自由でもない。1度だけ日本に行ったことがある。ひとり旅ともいえるし家出ともいえる。
日本では、
なんとなくホテルをとってなんとなくみてなんとなく歩いた。
土地慣れしてないのは当たり前で、道に迷って、駅のベンチで考えていた。
いつの間にか夕方で、目の前には女の子がいた。彼女は、俺に日本語で話しかけてきた。
「どうかされたんですか?」
「え?あ、俺寝てた、、、。えーっと、ここがどこかわからなくて。」
彼女は俺が日本語を話せると思っていた。ああ、俺は日本語を話せ読め書ける。だけど彼女のその行動が嬉しかった。
「ここは、N町のN駅です。」
「そうですか、、、。M駅までって、どの電車に乗ったらいいですか?」
「え?Mいまで行くんですか?私も行くので一緒に、どうですか?」
「あ、ありがとうございます。」そして、会って5分も、経ってない彼女とM駅まで電車に乗った。たくさん話した。
彼女はあおい。バンドをしていてギター。肩につかえるぐらいの髪型がその笑顔にとっても似合っていた。
電車の窓からみえた夕日は、とても美しく、まるで昔からここに住んでいたかのような気分になった。
これが俺と彼女の出会い。結局、俺の日本旅は叔父にみつかり怒られ、イギリスに戻された。
だけど、叔父は俺が日本に留学するのを許してくれた。