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「おお、ロミジュリやってるぜ。」
「定番中の定番だね〜」
「Drama Club」と洒落た文字で書かれたずっしり重い木製のドアを開けると、いかにも昔の貴族が着ていそうなドレスをまとったジュリエットがバルコニーのセットから身を乗り出していた。
「ああ、ロミオ様、ロミオ様!なぜあなたは、ロミオ様でいらっしゃいますの?」
あの有名なシーンを絶賛お芝居中だ。
にしても、ジュリエット身を乗り出しすぎじゃ...空でも飛ぶのか。それともロミオ様の顔を目に焼き付けたいのか。
ロミオ様役の顔はそんなに魅力的なのだろうか。ここからは見えないな...金髪のウィッグが眩しい...
「舞台化粧がなかったら、ジュリエットってあんな顔なんだな。おもしれえなあ。」
「こら、そんなこと言っちゃだめだよ!」
委員長には悪いが、僕も今キリンと全く同じことを考えていた。
「化粧怖いよな」
全くだ。
「ああ、ジュリエット!」
ロミオ様役は手をバッと広げた。さあ、落ちておいでって言ってるみたいだな 。落ちちゃえ落ちちゃえ。
その瞬間、身を乗り出していたジュリエットが傾いた。そしてスローモーションで落下した。思ったそばからってすごいな。
「キャーッ!」
「危ない!」
ロミオ様役が華麗にジャーンプ。そんでキャッチ。わお。後ろ姿でもかっこいいフォームだ。
演劇部員が心配そうにその周りをわらわらと囲んだ。委員長と状況をあまり把握できていないキリンがあとを続いた。僕も行こう。
「大丈夫ですか!?」
委員長がこんなにあわあわしてるところ初めて見た。キリンは見慣れてるのか真顔で見守っている。
「委員長真っ青だなー。」
「いつもこうなのか?」
「そうだなー、大体こうかなー。」
のほほんとした会話ってなんか落ち着くわー。
「アハハ、大丈夫、大丈夫!ちゃんとキャッチしたから!」
ロミオ様役がくるっと後ろを向いた。その顔を見た瞬間、僕は自分の全身の筋肉がこわばったのがわかった。
金色の髪、あれはヅラじゃない。
襟の下からかすかに見える黒いドクロ。
こっちに気づいたのか、ロミオ様役が僕の方を見た。そんで顔をこれでもかとしかめた。
「お前ここで何してんだよ、転校生。」
それはこっちのセリフだ、このエセワルがああああ!!!うそだろ!なんでロミオがこんなやつなんだよ!シェイクスピアに失礼だろ!
僕と田月汰裕の間に火花が飛び散った。
ばちばちっ。
「あの二人知り合い?なんか険悪な雰囲気なんだけど...」
「さあな。でもなんか面白くなりそうだぜ。」
キリン、お前はニヤニヤするな。殴りたくなるし、本物のキリンに大いに失礼だ。

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⏰ Last updated: Jul 10, 2016 ⏰

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