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6歳の僕は一回り年上の千秋と部屋で人形遊びをしていた。するとどこからか父が真っ赤な顔になりながら現れて、僕の手から人形を奪い取った。
「男が人形遊びなどけしからん!しかしお前に人形など買ってやった覚えはないのだがどういうことだ?」
「申し訳ありません旦那様!私が勝手に自分の物を持ってきました!」
それを聞いた父の顔は鬼だった。
「千秋!お前の脳みそは腐ってしまったのか?私がどんなに苦労して誠を一人前の後継ぎとして育ててきたと思っているんだ!それなのにお前は誠に女物など与えて...この愚か者が!!!」
千秋は必死に謝っていた。
だが父は怒りに満ちていた。目は血走っていた。父は千秋を思いっきり強く殴った。それも何度も。
僕の父への恐怖はとても大きく、その場で殴り倒される千秋をただ惨めに泣き震えながら見ていることしかできなかった。
とうとう千秋の体は父の拳に耐え切れず、床に横たわったまま動かなくなった。
「千秋ぃ...千秋ぃ...?」
僕は必死に千秋に呼びかけた。だが、返事は全く返ってこなかった。千秋のきれいな顔は変形していたと言えるだろう。額と潰れた鼻からは大量の血が流れ出ていて、頬のあたりは黒いあざでいっぱいだった。千秋の息は激しかった。
「誠...お前は男だ。そしてこの奥田家の後継ぎだ。もう一度このような真似をしてみろ。千秋がどうなってもいいのならな。いいな。」
その時の父の顔は黒かった。ありえないことだが真っ黒だった。
僕の返事がないことにイラだったか、父はゆっくりと拳を上げ、猛スピードで加速しながら腕を振り下ろした。
その時、ぐぱぁっと開いた父の口からはずらりと並んだギザギザの歯が見えた。
その時、僕の父への恐怖はピークまで達していた。
僕は目をつむって、叫んだ
「うわあああああああぁぁぁぁあ!!!」

どっと一回恋に落ちWhere stories live. Discover now