「ほ、本当に? 姉さん」
「本当よ。lua」
「一体どういうことなの?」
「つまり、サライはイエス・キリストでもあり、リザは聖母マリアでもあるということよ。lua、落ち着いて聞いてちょうだい。順を追って説明していくから」
「う、うん、わかった」
「じゃあまずは、聖母マリアの方からね」
私は、再びノートパソコンを操作して、別の絵画を画面に映し出した。
「この絵は、レオナルドが『モナ・リザ』よりも20年くらい前に描いた『岩窟の聖母』よ。聖母マリアと幼児キリスト、そして幼い洗礼者ヨハネと天使が岩窟を背景として描かれているわ。真ん中にいる女性が聖母マリアね。ちなみにこの絵は2枚あって、今画面に映し出されているのは、初めに描かれた方のいわゆるルーヴル・ヴァージョンと呼ばれている方よ[注18]」< pic22 >
私は、プリントアウトしたモナ・リザの絵の一枚をノートパソコンの画面の横に並べた。< pic23 >
「どう? lua、こうして並べて見てみると似ていない?」
「え? 聖母マリアとモナ・リザがってこと? うーん、どうかな」
「違うわ、lua。私が言っているのは、"服装"のことよ」
「服装?」
「そう、二人とも黒い服を着ているでしょ。私ね、最初に『モナ・リザ』をみたとき、なぜこの人は、こんな暗い恰好をしているのだろうって思っていたの。これはまるで喪服よね。たぶんそれが、私がこの絵を見て怖いと思っていた主な理由だと思う」
「姉さんの言う通り、確かに二人とも黒っぽい服を着ているね。でも、たまたま同じような服装になったとも考えられるんじゃない?」
「そうね。ただ、ネットで調べてみると、当時のイタリアでは、黒い服というのは一般的に着られるものではなかったそうよ[注19]」
「ふーん」
「それに、lua、もしあなたが私の肖像画を描くとしたら、私にこういう暗い恰好をさせる? もちろん、私は嫌だわ」
「場合にもよるかもしれないけれど、確かに私ならそういう服をまず選ばないわね。ということは、レオナルドは、『岩窟の聖母』のマリアの黒い服を意識して、『モナ・リザ』に敢えて同じような服を着せているということ?」
「私はそう思うわ」
「だから姉さんは、リザの姿に聖母マリアの姿が重ねられていると判断したのね」
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ラ・ジョコンダ
غموض / إثارةluiとluaの二人の姉妹 姉のluiが、レオナルド・ダ・ビンチ(Leonardo da Vinci)が描いた名画『モナ・リザ』についてどう解釈したのかを妹のluaに説明していく物語です。